日本政策金融公庫の金利の決め方とは?金利の特徴や種類も解説

日本政策金融公庫の金利

日本政策金融公庫は、実績のない事業主であっても融資を受けやすい金融機関のひとつです。充実した融資制度にくわえ、低い金利で融資を受けることができます。そのため、小規模事業者や中小企業にとって有力な借り入れ先となることも少なくありません。今回は、日本政策金融公庫の金利を決める要因をはじめとして、日本政策金融公庫の金利の特徴や種類を解説します。より低い金利で借り入れたい場合や、自身に適用される金利が知りたい場合の参考にしてください。

h2 日本政策金融公庫とは

日本政策金融公庫とは、政府が100%出資する政府系金融機関をいいます。主な融資対象は、個人事業主をはじめとする小規模事業者や中小企業です。また、日本政策金融公庫には以下の3つの事業分野があり、それぞれ融資対象が異なります。

・国民生活事業:個人企業、フリーランス、小規模企業が融資対象

・中小企業事業:中小企業が融資対象

・農林水産事業:農林漁業や国産農林水産を取り扱う、加工流通分野の事業が融資対象

融資を希望する際は、自身の事業形態や事業分野を融資対象としている事業分野が提供する融資制度から選択します。それぞれの事業ごとに10種類以上の融資制度があるため、一般的な金融機関よりも自身の事業に適した融資を受けることが可能です。

h2 日本政策金融公庫の金利

日本政策金融公庫では、担保提供した場合の貸付利率が最大3.0%以下という低い金利で融資を受けることが可能です。(2023年3月1日現在)また、金利は融資制度ごとに定められており、融資制度によっては1.0%以下になることも少なくありません。ほかにも、以下の特徴があげられます。

h3 固定型金利と変動型金利

日本政策金融公庫の金利は、固定型金利と変動型金利の2種類あります。ただし、自身でいずれかを選択できるのではなく、融資制度ごとで定められているため注意が必要です。固定型金利と変動型金利の違いとして、以下があげられます。

・固定型金利:返済終了までの間、利率が変動しない

・変動型金利:一定の期間ごとに利率が見直される

基本的に、日本政策金融公庫では固定型金利が採用されています。変動型金利よりも、やや高めの金利に設定されていますが、安定した返済計画を立てることが可能です。

h3 特定の条件を満たすことで特別利率が適用される

融資制度によって、基準利率のほかに特別利率が定められているケースがあります。特別利率は特利とも呼ばれており、融資対象者の年齢や融資目的などの条件を満たすことで、より低い金利で融資を受けることが可能です。

・国民生活事業:特別利率Aから特別利率Uまでの12種類

・中小企業事業:特別利率①から特別利率③までの3種類

すべての融資制度に特別利率が定められているわけではありませんが、適用されれば返済負担が大幅に軽減されます。融資を希望する際は、適用される特別利率があるかどうかを確認するとよいでしょう。

h3 金利は金融情勢によって変動する

一般的な金融機関と同じように、日本政策金融公庫の金利も金融情勢の影響を受けて日々変動します。現在の金利を知りたい場合は、日本政策金融公庫の公式ホームページにて主要利率を確認するか、支店にて問い合わせするとよいです。金利は低ければ低いほど返済負担が軽減されるため、現在の金利を確認してから融資申請することをおすすめします。

参考:日本政策金融公庫/主要利率一覧表

h3 融資制度や申請内容によっても金利は変動する

金融情勢のほかに、担保の有無や返済期間によっても金利が変動するケースがあります。実際の金利を知りたい場合は、以下をまとめたうえで日本政策金融公庫の窓口に問い合わせてみるとよいです。

・融資を希望する金額や資金用途

・事業計画をはじめとする、返済期間を検討できるデータ

・担保や保証人を用意できるかどうか

これらの情報は、融資審査においても大きな影響を与えます。ただ漠然と融資を希望するのではなく、返済計画や返済能力があることを証明できるようにしましょう。

h2 日本政策金融公庫の金利の決め方

日本政策金融公庫では、融資制度ごとに定められた金利をベースにいくつかの要因によって金利が決定されます。金利を決める主な要因は以下の4つです。

・融資制度の種類

・保証人や担保の有無

・融資額や返済期間の長さ

・借り主の信用力

これらはすべて日本政策金融公庫からの審査や判断に左右される要因です。性格な金利を知りたい場合は、支店の窓口に確認することをおすすめします。

h3 融資制度の種類

日本政策金融公庫では、融資制度ごとに金利が定められています。融資を希望する場合は、事業内容や融資目的などに応じた融資制度を選択して借り入れるのが一般的です。また、通常は基準利率が適用されますが、融資制度ごとに定められた条件に該当した場合は「特別利率」と呼ばれる低金利が適用されるケースがあります。適用される金利を正しく判断するためにも、自身の事業内容や融資目的を改めて明確化しておくとよいです。

h4 国民生活事業が提供する融資制度

国民生活事業には、新規開業の支援をはじめとして10を超える融資制度があります。融資額の平均は約1,000万円です。また、事業を営む大半の人が希望できる融資制度「一般貸付」が用意されています。そのため、一般金融機関やほかの融資制度で融資を断られた場合であっても、融資を期待できるでしょう。以下は、国民生活事業の融資制度の一部です。(2023年3月1日現在)

融資制度融資限度額金利
一般貸付4,800万円基準利率(2.15~3.15%)
新規開業資金7,200万円基準利率(2.15~3.15%)
特別利率A(1.75~2.75%) ・35歳未満または55歳以上 ・産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める人
特別利率D(1.50~2.30%) ・Uターン等により地方で事業を始める人
新型コロナウイルス感染症特別貸付8,000万円基準利率(2.15~3.15%)
経営環境変化対応資金4,800万円基準利率(2.15~3.15%)
特別利率Q(1.75~2.75%) ・原油価格上昇の影響を受けて、売上高総利益率または売上高営業利益率が前期に対して5%以上減少した人

参考:日本政策金融公庫/国民生活事業

国民生活事業が提供する融資制度のなかには、無担保・無保証で融資が受けられる制度や短期における運転資金の融資制度もあります。比較的、間口が広い融資制度が揃っているといえるでしょう。

h4 中小企業事業が提供する融資制度

中小企業事業においても、複数の融資制度が提供されています。国民生活事業と同様の融資制度も用意されていますが、融資残高の平均は約1.3億円と大きいです。申請可能かどうかは業種や企業規模によって判断されるため、事前に融資対象を確認しておきましょう。以下は中小企業事業の融資制度の一部であり、特別利率が設けられている制度があります。(2023年3月1日現在)

融資制度直接融資限度額金利
新規事業育成資金7億2千万円特別利率②(0.60~2.5%) ・独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けた人
特別利率③(0.55%~2.5%) ・公庫の成長新事業育成審査会から事業の新規性や成長性の認定を受けており、特定の指補助金の交付を受けて開発した技術を利用した新事業を行う人、もしくはJ-startupプログラムに選定された人
新型コロナウイルス感染症特別貸付6億円基準利率(2.15~3.15%)
非化石エネルギー関連導入による貸付7億2千万円基準利率(2.15~3.15%)
特別利率①(0.80~1.60%) ・4億円を限度として、発電出力10kW以上の太陽光発電設備または、地熱熱もしくは太陽熱による熱利用設備を取得する人

参考:日本政策金融公庫/中小企業事業

中小企業事業の特別利率は3種類あり、それぞれ貸付期間によって金利が異なります。たとえば特別利率①の場合、貸付期間が5年以内であれば0.80%、10年超11年以内であれば1.10%です。貸付期間によって金利が変動するため、経営状況や事業の運営計画を明確にしたうえで融資を希望することをおすすめします。

h4 農林水産事業が提供する融資制度

農林水産事業の融資制度は、長期事業資金の融資が基本です。融資期間が長期であり、融資限度額は事業によって異なることから金利は発表されていません。融資を希望する際は一度、日本政策金融公庫へ相談してみるとよいでしょう。

h3 担保や保証人の有無

日本政策金融公庫では、担保や保証人の有無によって金利が変わる傾向にあります。不動産や有価証券を担保とした場合や連帯保証人を用意した場合、金利が下がることが一般的です。たとえば国民生活事業の融資制度において、担保の有無で以下の差が生じます。(2023年3月1日時点)

・担保を用意しない場合の基準利率:2.15~3.15%

・担保を用意した場合の基準利率1.20~2.80%

なかには、担保や保証人が求められる融資制度や、担保設定の有無は相談のうえ決定されるケースがあります。すべての融資制度において担保や保証人の有無が自由に選択できるわけではないため、注意が必要です。

参照:日本政策金融公庫/国民生活事業(主要利率一覧表)

h3 融資額や返済期間の長さ

希望する融資額や返済期間の長さも、金利に影響を及ぼします。希望する融資額が多くなったり返済期間が長くなったりするほど、金利が高くなることが一般的です。とはいえ、金利を引き下げることを目的として無理に返済期間を短く設定してしまうと、返済が滞ってしまう恐れが考えられます。融資を受ける際は金利の引き下げにこだわるのではなく、無理なく返済できる融資額と返済期間を設けることが大切です。

h3 借り主の信用力

金利は「借り主の信用力」によって変動することがあります。借り主の信用力が高いほど、低金利が適用されやすいです。たとえば、借り主の信用力に影響を与える要因として返済実績や債務者区分があげられます。債務者区分とは、財務状況や資金繰りなどを元に金融機関が返済能力を判定・区別したものです。以下の5つに区別され、低いランクに区分されるほど融資に悪い影響を与えます。

・正常先:経営、財務ともに健全な企業

・要注意先:3か月以上の延滞が発生した実績がある等、財務状態が不安定な企業

・破綻懸念先:財務状態が悪く、破綻の可能性が高い企業

・実質破綻先:債権の見通しが立たず、破綻が目前であると考えられる企業

・破綻先:破綻状態にある企業

破綻先に分類された場合、日本政策金融公庫をはじめとする金融機関からの融資を受けられる可能性は限りなく低いといえます。金利を引き下げたい場合は、正常先に区分される事業状態を心がけましょう。

h2 まとめ

日本政策金融公庫は低い金利で融資が受けられるうえ、融資制度も充実しています。小規模事業者や中小企業にとって利用しやすい金融機関ではありますが、金利はさまざまな要因で変動するものです。金融情勢だけでなく、担保の有無や信用力をはじめとする要因も考慮しなければなりません。自身が特別利率の適用であるか、どれくらいの金利になるのかを具体的に知りたい場合は、日本政策金融公庫に問い合わせするとよいでしょう。問い合わせする際は、紹介した「金利を決める要因」を整理しておくことをおすすめします。

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