創業融資を受ける際に自己資金はなくても大丈夫なのか?

創業融資を受ける際に自己資金はなくても大丈夫なのか?

起業や独立をする際には、一般的に融資枠に対してその3割を自己資金として用意しておくと良いと言われています。

例えば、起業に1,000万円かかるとすると、自分の起業に使える貯金を300万円は用意しておく。起業に5000万円が必要であれば、自分の貯金は1500万円用意しておかなければなりません。

しかしながら、夢が大きければ大きいほど、起業の時の創業資金は大きくなりますし、すぐに起業しないとチャンスを逃してしまう場合や、預貯金を貯めるまでに時間がかかってしまう場合があります。自己資金はとても大きな悩みです。

もっとも、融資を受ける際には創業計画書をしっかりと作り、返済計画のスケジューリングをし、経営がしっかりしている有望な事業だと認めてもらって審査を通過することができれば、自己資金がなくても融資決定される可能性はあります。

ではその具体的な方法をご紹介していきます。

目次

創業融資が自己資金なしで受けられる5つの方法について

自己資金なしで創業融資が受けられる方法は5つあります。

その前に、融資をお願いする場合、金融機関のタイプが主に3つあります。

  1. 日本政策金融公庫のような政府系金融機関
  2. 信用保証付き融資である自治体の制度
  3. 民間の金融機関である銀行や信用金庫

それぞれについて自己資金なしで融資が受けられる制度が5つありますので説明していきます。

日本政策金融公庫の新創業融資制度

政府系金融機関である日本政策金融公庫は、融資元としては外せない機関です。政府系金融機関なことから、低金利の融資で個人事業主や中小企業を支援してくれています。その中でも特に起業の創業支援として「新創業融資制度」などに力を入れています。この新創業融資制度は新規で起業する人に向けて、担保が不要・無保証でしかも、最大3,000万円まで融資をしてくれます。この新創業融資制度はぜひ利用を検討してください。

しかし、融資にはさまざまな条件があり、その中でも「自己資金要件」というものがあります。

どのような中身かというと「創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」という条件になります。

ここで、やっぱり自己資金が必要なのかと思い込んでしまいますね。

ところが、この条件には自己資金がなくても融資を受けられる例外があります。

その例外とは

自己資金が無くても融資を受けられる場合

・現在お勤めの企業と同じ業種で起業し事業を始める方
・産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて起業し事業を始める方

これら2つに当てはまる方が例外として自己資金なしで融資を受けることができます。

つまり今、勤務している会社と同じ業種で企業や独立する人、または自治体から「特定創業支援事業」であると認定されれば、自己資金がなくても最大3,000万円の融資が受けられます。

特定創業支援事業の認定とはどういったものなのかなど、日本政策金融公庫の創業融資制度は多くの人が利用を検討する制度なので、後ほど詳しく説明をします。

日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金

また、日本政策金融公庫には「新創業融資制度」の他にも「中小企業経営力強化資金」という自己資金が不要の制度があります。この融資でもっとも大事なところは融資を受けられる適用資格・条件です。

個人事業主または小規模事業者の場合の適用資格・条件

次の1または2に該当する方

1)次のすべてに該当する方
◎経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む)を行おうとする方
◎自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方

2)次のすべてに該当する方
◎「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定である方
◎事業計画書を策定する方

中小企業の場合の適用資格・条件

次の1または2に当てはまる方

1)次のすべてに当てはまる方
◎経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む。)を行おうとする方
◎事業計画書を策定し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方

2)次のすべてに当てはまる方
◎「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用している方または適用する予定である方
◎事業計画書を策定する方

この中でも特に説明をすべきポイントは「認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方」という部分です。

「認定経営革新等支援機関」は「経営革新等支援機関」と同じものを指します。経営や会計に関するプロフェッショナルとして国が認定した機関です。

具体的には、

・税理士・公認会計士・弁護士・中小企業診断士などの資格をもった職業の方
・地域の地方銀行や信用金庫などの金融機関
・地区ごとに設立されている商工会・商工会議所

などが国から認定を受けています。

これらの機関や職業の人はその知識などを元に個人事業主や小規模事業者、中小企業のさまざまな経営相談に乗って支援をしています。

このような認定支援機関の指導を受けて事業計画を作ることができれば「中小企業経営力強化資金」の融資を受ける資格ができます。

また、これらのプロフェッショナルな指導を受けて事業計画のみならず、創業計画や返済計画なども相談に乗ってもらうことができれば、より日本政策金融公庫の融資の審査に通りやすくなります。相談だけではなく申請に必要な事業計画書の作成もサポートしてもらえます。

事業計画書を綿密に作成することは融資の審査を通過する際にもっとも重要になるポイントです。

説得力があって実現性の高い計画を立てることは融資を受ける上でもっとも大事です。根拠の元となるデータをたくさん集めて、必要であれば市場調査をおこないましょう。資金繰りや返済計画などについても具体的な数字をもとに試算をおこない、全てにおいて他人にも十分に納得してもらえる計画を立ててください。

自己資金なしでもこれらの条件だけで融資を受けることができますので、ぜひ認定支援機関を利用して相談に乗ってもらい事業計画書のサポートをしていただきましょう。

日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度

さらに日本政策金融公庫では「挑戦支援資本強化特例制度」という融資制度を有しています。

この融資が対象としているのは、スタートアップ企業やベンチャー企業、新たな事業をおこす起業などです。しかしこの「挑戦支援資本強化特例制度」には「資本性ローン」というメリットがあります。

つまり、この融資は他の銀行や自治体から融資を受ける際に、この融資分が「資本」となり「負債」には入りません。通常は他から借り入れた融資は「負債」となります。

では「資本」となった場合にどんなメリットがあるかというと、負債ではなく資本が増えたことによって、他の銀行や信用金庫などの金融機関からの融資審査に通りやすくなります。

こちらにも対象者となるための条件がいくつかあります。

個人事業主または小規模事業者の場合の適用資格・条件

次の1および2を満たす法人または個人企業の方

1)適用できる融資制度・新規開業資金
・女性、若者/シニア起業家支援資金
・再挑戦支援資金
・新事業活動促進資金  など

2)その他の条件として、次のいずれの要件も満たす方
・地域経済の活性化にかかる事業を行うこと。
・税務申告を1期以上行っている場合、原則として所得税等を完納していること。

中小企業の場合の適用資格・条件

直接貸付において、新企業育成貸付、企業活力強化貸付または企業再生貸付を利用される方で、地域経済の活性化のために、一定の雇用効果(新たな雇用または雇用の維持)が認められる事業、地域社会にとって不可欠な事業、技術力の高い事業などに取り組む方。

以上が条件です。場合によっては、新創業融資制度や中小企業経営強化資金にプラスして恩恵を受けられる制度ですから、ほかの融資を受ける際にも必ず申請できるかどうかをチェックしておきましょう。合わせればかなり大きな額の融資を受け取れるかもしれません。

自治体の制度融資

都道府県や市区町村のような地方自治体にも個人事業主や企業へ向けた融資を行っている地方自治体があります。厳密には地方自治体が直接融資をするのではなく、信用保証協会の保証付き融資を金融機関と連携しておこなうというものです。

地方自治体によって制度があったりなかったりしますが、東京都を例にすると「東京都中小企業制度融資 【創業】 」という融資があります。

東京都中小企業制度融資【創業】の適用資格・条件

都内に事業所(個人事業者は事業所又は住所)があり、東京信用保証協会の保証対象業種を営む中小企業者で以下3点のいずれかに該当する方

・現在事業を営んでいない個人で、創業しようとする具体的な計画を有している
・創業した日から5年未満である中小企業者等
・分社化しようとする会社又は分社化により設立された日から5年未満の会社

担保・保証人の条件

既存の保証付融資残高と新規の保証付融資額の合計が8,000万円以下の場合は、原則として無担保法人代表者を除き連帯保証人は原則として不要です。

これらを始めとした地方自治体の融資制度には自己資金が不要のものがあります。ただし、自治体によっては制度そのものがない場合もありますので気をつけてください。自治体には他にも補助金・助成金の制度がいろいろある場合もあります。自己資金不要のものもあるかもしれませんので、起業したい場所の管轄である自治体についてはさまざまな情報を集めてたり問い合わせをしておきましょう。

銀行・信用金庫の融資

民間の金融機関である銀行や信用金庫にも起業向けの融資商品がある場合があります。特に大手のメガバンクよりも地方の銀行や信用金庫での方が取り扱いが多く、大きな銀行では起業向け融資の取り扱いはあまりないようです。こちらについても起業したい地域の地方金融機関を積極的に訪れて情報収集してください。

ここまで書きましたが、民間の金融機関では自己資金なしでの申請は審査が通りづらいとされています。創業計画書を元にした事業計画を綿密に検討してクオリティの高いものを作り、ていねいに説明をして融資の審査をしてもらえるかどうかを直接相談しましょう。

ここまで、自己資金なしの融資をする5つの方法をざっと紹介してきましたが、その中でも日本政策金融公庫は、その内容からももっとも申し込みたい制度です。そのことから創業融資制度をもっと詳しく説明します。

日本政策金融公庫の創業融資制度の詳細について

創業融資の中でも、金利が低く、担保が不要・保証人などの保証も不要で3,000万円まで資金調達でき、自己資金がなくても融資を受けられる「新創業融資」はもっとも申し込みたい融資制度です。

その定められた中身はこちらです。

創業融資制度の適用資格・条件

次の1~3のすべての要件に該当する方

1)創業の要件新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方

2)雇用創出等の要件「雇用の創出を伴う事業を始める方」、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」又は「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」等の一定の要件に該当する方(既に事業を始めている場合は、事業開始時に一定の要件に該当した方)なお、本制度の貸付金残高が1,000万円以内(今回のご融資分も含みます。)の方については、本要件を満たすものとします。

3)自己資金要件新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合

資金の使い道      新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金

融資限度額          3,000万円(うち運転資金1,500万円)

●利率    1.01%~2.80%

●担保・保証人    原則不要

それでは、詳しく説明していきます。

日本政策金融公庫の創業融資制度の融資対象となる条件

前述しましたが、融資対象の条件として、創業資金のうち10分の1以上の自己資金が必要です。ということは100万円の自己資金なら1,000万円、300万円の自己資金なら3,000万円までの創業資金までしか融資を受けられないということになります。

しかし、これには例外があり、さらなる条件をクリアできれば自己資金がなくても創業融資を受けることができます。

その条件とは

・現在勤務している起業を同じ業種の事業で起業する方

こちらは、いま勤めている会社から独立して同じ業種で起業を始める場合です。これは条件の一つではありますが、融資審査の際にも起業する時に同業であることの方がその後の収益が上がる見込みがありますので、審査にプラスに働く可能性があります。同業で始めるのであれば自己資金のあるなしにかかわらず審査申し込みの時に提出しておきましょう。

・産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて起業する方

こちらはとても難しく特に「認定特定創業支援等事業」とは何かから説明します。

「認定特定創業支援等事業」とは、新規開業を支援するための国の事業です。

その中身は、例えば自治体が経営、財務、人材育成、販路拡大などに関する知識を起業者に指導し、開催する個別相談できるセミナーやイベントに参加します。さらに、自治体が決めた内容や出席回数、出席期間をこのセミナーや個別相談などを受けて、自治体に証明できると証明書が発行されます。この証明書があると起業をする上でのさまざまな制度の優遇措置を受けることができます。

要するに、自治体が決めた基準で相談・指導の支援を受けて証明書がもらえれば、自己資金がなくても日本政策金融公庫の新創業融資制度での融資を申請する資格ができます。

この自治体からのセミナーや個別相談の支援はその後、起業する時や事業を立ち上げて運営する際にとても役にたつ情報や支援を受けられますので、自己資金があってもぜひ利用してみてください。

適用条件はどちらか一つですが、2つとも条件をクリアしていても問題ありません。

日本政策金融公庫の創業融資制度の融資限度額や金利について

新創業融資制度の金利は2.41%〜2.80%です。金利は返済期間や融資額によって違ってきます。

また、本来は不要ではありますが担保や保証金を用意することができれば、最低1.01%に金利を引き下げて融資をしてもらうことが可能です。

この融資の資金は3,000万円までが融資限度額になりますが、そのうちの1,500までしか運転資金として使うことができません。例えば、3,000万円のうち運転資金は1,500万円まで、残りの1,500万円は設備資金に使わなければならないと決まっています。融資の3,000万円すべてを運転資金に使うことはできませんのでご注意ください。

日本政策金融公庫の創業融資制度の融資の審査が通るまでの日数

新創業融資制度の場合は、審査に2〜3週間ほど要しますので、実際に申請してから資金が入金されるまでは最短でも1ヶ月ほど見ておくべきでしょう。

もし、年末年始や年度末、期末など忙しい時期に申請してしまうともっと時間がかかります。また書類に不備があった場合にも、やりとりをしなければならず、予定が伸びると思いますので、開業する日から余裕を持って申請をしてください。また、もしかしたら審査が通らない場合もあります。その場合は他の方法で資金調達をしたり、別の融資に申請したりする必要があります。新創業融資の申請は資金が必要になる2〜3ヶ月前には完了しておくのが安心です。

日本政策金融公庫の創業融資制度の申請に必要な書類

新創業融資制度の申請に必要な書類は以下になります。

・借入申込書
・創業計画書
・履歴事項全部証明書または法人の場合は登記簿謄本
・設備資金を申し込む場合は見積書
・担保希望する場合は不動産の登記簿謄本または登記事項証明書
・生活衛生関係の事業を営むものは、都道府県知事の「推薦書」または生活衛生同業組合の「新興事業に係る資金証明書」

と難しいものが多いです。しかし、必要な申請書類はこれだけではありません。任意ではありますが申請する時に同時に提出した方が良い書類があります。

それは「計画についての資料や資産・負債のわかる書類などはあったほうが良い」と日本政策金融公庫のホームページに案内されていますので、こちらも具体的に見ていきます。

・資金繰り計画書としての月別収支計画書

これは、創業計画を裏付けるものとして提出します。月ごとの売上や仕入原価、経費とそれらから算出した月ごとの利益を計算してその算出した根拠も説明します。

・賃貸借契約書または賃貸借予約契約書

店舗や事務所に対する賃貸契約書です。まだ契約書がない場合には賃貸借予約契約書でも問題ありません。

また、もし自己資金があるなら、それを証明する預金通帳などを資料としてそれぞれ提出する必要があります。自己資金がない場合には、創業計画書や月別収支計画書を誰が見ても納得してもらえるように、綿密に作っておきましょう。

申し込み方法やその後の流れ

たくさんの必要書類を申請しますが、それらを申請する場所は、個人であれば起業する予定の場所の近くにある日本政策金融公庫の支店、法人であれば本社または本店のある日本政策金融公庫の支店に申し込みにいってください。日本政策金融公庫の地域の管轄や所在については日本政策金融公庫のホームページで確認できます。また、必要書類の申請は郵送での提出も可能です。

その後の流れは、次に面談・審査があり、事業計画や提出した書類の説明などをします。審査を通過し、融資が受け取れることが決定すれば、契約書類が送られてきますので、契約の手続きをすると創業資金が入金されます。その後は起業した後に返済計画の通りに返済をしていかなければいけません。

実は預貯金以外にも自己資金として認定される可能性があります

これまで、「自己資金なし」でできる創業支援融資を受けるための方法をお伝えしてきました。ですが、預貯金だけが自己資金ではありません。自己資金だと思っていないものが、実は自己資金だったということもあります。それを自己資金として資産に入れて融資の申請の際に事業計画書とともに提出できれば、さらに融資の審査を通過しやすくなりますし、融資限度額も増え、返済の金利も下がる場合があります。

それでは、自己資金ととらえられないことの多いけど自己資金に認定できるもの、自己資金に含まれても良さそうでも実は含められないものをそれぞれ挙げていきます。

自己資金に含めても良いもの

自己資金と認められるものというのは自分の財産のうち、出どころがはっきりわかるものとなります。

・退職金・生命保険の解約金

・親族からの贈与金

・相続したお金

・資産や持ち物を売却したお金

・みなし自己資金

これはすでに起業しており、その起業の際にかかった設備投資などの費用

・第三者割当増資

起業する際に株式を発行した場合の株式の費用

これらは、あくまでも自己資金としてみなしてもらえる可能性が高いものです。場合によっては自己資金とみなしてもらえない場合もあります。早めに相談し確認しておきましょう。

一方、自己資金として認められないものは自分で貯めたもの、自分で手に入れたものという証明ができない場合となります。とにかく出どころがわからない、証明できない不明のお金は自己資金として認めてもらえません。

自己資金として認めてもらえないもの

・他の金融機関からの融資

消費者金融から借りたお金などは自己資金には含まれません。

・タンス預金

例え自分で貯めたものでも記録をしておくことが必要です。銀行などに預けて記帳しておかなければなりません。もちろん貯めた経緯がわかったほうが良いので、都度記帳しましょう。

・親族や知人からの借入金

借りたものは贈与金とは異なります。返していかなければならないお金なので自己資金としては認められていません。

これらを踏まえて、自己資金として判断してもらえるかどうかを確認し、証明できるものを提出して融資の申請をしてください。同じ事業計画だとしても、自己資金なしより、少しでも自己資金があったほうが、融資額や金利、審査通過にプラスに働きます。

融資のために自己資金を増やす行う7つの方法

ここまで自己資金なしの融資の説明をしながら、自己資金に含まれる資産についても案内してきました。自己資金は無いよりもあったほうが断然良いものです。

そこで、自己資金を自分で増やす方法についてもいくつかの案を挙げていきます。

コツコツ貯めるのが一番堅実ですが、それだけではチャンスの時に夢に到達できない可能性があります。

自己資金だけでなく、自己資金に認めてもらえる資産も含めて増やす方法がいくつかあります。

出資をしてもらう

起業する上でまず取り組むべきは出資者を募ることです。事業計画をみて協力してくれる投資家を見つけたり、最近ではクラウドファンディングでも出資をしてもらうことができます。しかし、出資してくれた資金を事業計画書などにきちんと書いておかねばなりません。どのように使う資金なのか、この資金で何を成し遂げたいのか、この分の出資のリターンなど、使い道や意図をきちんと説明することが求められます。そうしないと自己資金と認められない場合がありますので注意してください。

現物を申告して資産とみなしてもらう

起業する時に、設備資金としてみなしてもらえる場合は自分で所持していたものを資産としてカウントしてもらえます。

例えば、不動産・有価証券・パソコンなどのOA機器、車などの事業で使うものをもともと自分で所持していた場合です。そのまま起業時に使える場合は、融資の際に自己資金として申請し審査してもらいます。

みなし自己資金も申告する

起業前でも起業に必要で支払った費用は自己資金の一つとして申請の際に申告することが可能です。元々、自身で所持したものでなくとも、融資の申請前に購入し事業を行うのに必要なものがそれにあたります。具体的には、現物資産と同じように、車やパソコン、その周辺機器などです。しかし、その申請をする場合には購入した時の領収書や口座からの引き落とし履歴など、商品とその購入時期、金額がわかるように証明が必要です。忘れないようにしてください。

保険を解約する

積み立ててある保険を解約して積立金を自己資金にするのも一つの方法です。この場合には解約してもそれが入金される証明ができなければ自己資金とみなしてもらえないので、融資の申請をする前に解約の申請と積立金が口座に入金されるように逆算して、早めに手続きをしておきましょう。

親兄弟や親類から贈与してもらう

先ほど、親族からの贈与金は自己資金に入るとしました。しかし借りたものは自己資金にはなりません。借りるのではなく贈与にしてもらいましょう。その際、贈与であって借りたものでは無いという証明が必要なので、贈与契約書などを作成しておきましょう。そうしないと、申請の際に贈与であり借金ではないという証明ができなくなってしまいます。特に親族間では、贈与と言っても後で返すのではないかと疑われやすいものです。融資の審査の時に審査担当者から電話等で問い合わせがくる場合もありますので、親族にもそのことを伝えておきましょう。また、その問い合わせの際には、きちんとした説明を求められますので、事業の中身や金額についての詳細などはきちんと説明して了承してもらえるようにしておきましょう。

資産を売却してしまう

もし、不動産やそのほかに価値のあるものを所持している場合にはそれらを売却して自己資金にすることも考えましょう。他にも土地や建物、車など資産価値を持っているけど使っていないもので、事業では必要の無いものは、前述したみなし自己資金には認めてもらえ無いです。であれば売却して少しでも自己資金を増やしましょう。

退職金を自己資金として認めてもらう

副業としてではなく、会社を辞めて起業・独立する場合で、勤続していた会社で退職金制度があった時は自己資金として認めてもらえます。つまり、やめる際に退職金を入金で受け取ることができるのであれば問題ないのですが、退職金は決められた年齢まで受け取ることができないことがあります。条件によってはまだ受け取っていない退職金でも資産として自己資金に組み込んでもらえる可能性があります。もちろんその時にも、退職金がどのくらいの金額で、いつから支給されるのかなどがはっきりとわかる証明書類を融資の審査の時に提出することが必要です。

創業融資を自己資金なしで審査してもらう場合のデメリット

これまでのさまざまな方法でも、どうしても自己資金が用意できない場合もあるでしょう。その場合はどういったことがデメリットとして注意しておかないといけないかをお教えしておきます。

融資額が少なくなる

経営への不安があれば貸してくれるお金が少なくなりますから、通常は自己資金が多ければ融資限度額も大きくなります。であれば、自己資金が少なければ融資額も小さくなるということです。

また、日本政策金融公庫の新創業融資制度の場合は自己資金は限度額の10分の1とされています。しかし実際には、自己資金がなければ限度額の2〜3分の1程度と言われています。となれば融資額が小さくなってしまいますので頭に入れておきましょう。

金利が高くなる

融資の審査の時には返済計画も同時に示しますが、自己資金がない場合は返済計画自体も弱いものになってしまうかもしれません。融資額も減りますが、当然金利も高くなります。

特に信用保証協会の保証つき融資の場合は1〜2%の金利が自己資金がある場合に比べて高くなることもあります。金利は低い方が、もちろん経営を圧迫しないのでできれば低い方が良いです。

一時しのぎで用意した自己資金は指摘されてしまう

自己資金をどうしても用意したくて無理をしたり、虚偽の申請をしてしまうと、審査の時に隙をつかれて不正とみなされてしまう場合があります。

例えば、後から返済するのに親族から贈与金だと偽ったりするのはやりやすいです。しかし、このような虚偽はやりやすいためにとても警戒されていて、預貯金確認や親族への確認など細かく追求されてしまいます。もちろん不審な点がなかったり、本当に贈与金なのであれば問題ありません。その場合にも疑惑をもたれないようにしましょう。

創業融資を創業融資以外で資金調達するための方法

ここまで自己資金なしでの融資を受ける方法や注意点を事細かに説明してきました。しかし融資以外の資金調達も方法がないわけではないです。また審査を通過できずに融資が受けられないということもあるでしょう。創業融資以外での資金調達の方法も知っておきましょう。

共同経営とする

ひとりだけで起業すると自己資金がゼロの場合に苦労しますが、共同経営の場合で共同経営者が自己資金を用意できるなら、融資の申請ができ、審査に通過できる可能性が高くなります。

自分一人よりも起業や事業の運営も安心して進められますので、同じこころざしの人が近くにいないか探してみましょう。

自治体の補助金・助成金を受け取る

国や地方自治体では起業を支援するためにさまざまな補助金や助成金の制度を用意しています。どんな補助金・助成金などの支援制度があるかは、起業する場所の自治体によって異なりますので、ネットなどで検索して条件に合うものを探してみてください。

カードローンを利用する

おすすめはしませんが、どうしても自己資金が用意できず、融資も受けられない場合はカードローンなどに頼るしかありません。さまざまなカードローンがありますが、限度額も低めですし、金利が14%〜18%くらいのものが多く、とても金利が高いです。小さな金額ですぐに返すことができる場合のみ検討してみてください。

まとめ

これまで起業の際の融資や自己資金がない場合についての説明を細かくしましたがいかがでしたでしょうか。これらをまとめると

自己資金なしで創業融資を受ける5つの方法は

・日本政策金融公庫の新創業融資制度で利用する

・日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金で利用する

・日本政策金融公庫の調整支援資本強化特例制度で利用する

・自治体の制度融資つまり信用保証協会の保証つき融資を利用する

・銀行・信用金庫の信用保証協会の保証つき融資を利用する

自己資金なしの創業融資を受ける際のデメリット

・融資額が少なくなる

・金利が高くなる

・一時しのぎで用意した自己資金は指摘されてしまう

いろいろと細かい説明だったので、結局どの融資が自分に合っているか、余計にわからなくなってしまう方もいるかもしれません。WEB上に条件や金額を選んで入力すると自分にあった融資制度を診断してくれるサイトなどもあります。また自治体やそのほかのプロフェッショナルな人たちに相談すると、どんな融資が最適なのかアドバイスしてくれます。起業の際は周りの力もたくさん借りて、ぜひ夢を実現させてください。

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