会社設立のメリット・デメリットを詳しく解説

会社設立のメリット・デメリットを詳しく解説

事業をはじめる際、会社設立か個人事業主のどちらかを選択しなければなりません。適切な選択を行わなければ、金銭的な負担を伴う恐れがあります。従って、慎重に検討する必要があるといえるでしょう。

検討するポイントのひとつとして、メリットとデメリットがあげられます。メリットとデメリットを把握することは、最適な事業形態を選択するためのひとつの指標となるでしょう。

本記事では、会社設立のメリットとデメリットを解説します。会社を設立するかどうか検討する際の参考にしてください。

目次

会社設立のメリット

会社を設立したときのメリットは以下となります。

1. 社会的信頼が高い

会社を設立する際、法務局にて登記することが義務付けられています。一方、個人事業主は登記手続きをする必要はありません。登記とは、商号・住所・代表者・資本金といった会社概要や事業内容を法制度に基づいて登録することです。登記することで会社の権利や義務を保護し、社会に向けて公示することができます。

登記はいわば、会社の身分証明のようなものです。第三者は登記によって会社を知ることができるため、社会的信用が得られるといえるでしょう。販売拡大・人材確保をはじめとし、取引が有利にはたらく傾向にあります。

2. 節税しやすい

会社を設立すると会社の所得に対して法人税が、個人事業主の所得に対しては所得税が課税されます。個人事業主に課される所得税は、所得が増えるほど税率が高くなる累進税率です。一方、会社に課される法人税は、所得が増えたとしても原則税率は変わりません。年間所得が500万円を超える場合、会社のほうが税率を低く抑えることができます。

また、経費として認められる範囲も広いです。個人事業主には認められていない給与所得控除などが適用できます。ほかにも、以下のようなさまざまな節税手段によって、支払う税金を低く抑えることが可能です。

  • 生命保険料の一部を経費にすることが可能
  • 社宅を貸し付けることによる節税
  • 赤字(欠損金)の10年間繰越

などです。

3. 融資の審査が通りやすい

会社は1年に1度の決算期に、貸借対照表と損益計算書を作成する必要があります。貸借対照表は、一定期間の資産・負債・純資金の金額と内訳をまとめた書類。損益計算書は、一定期間の利益・支出をまとめた書類です。

金融機関は貸借対照表と損益計算書を確認することで、返済能力を確認することができます。従って、金融機関からの融資が受けやすくなるといえるでしょう。とはいえ、個人事業主は融資を受けにくいというわけではありません。あくまで、個人事業主よりも融資の可能性が広くなるだけです。

また、株式会社や合同会社は有限責任です。出資した金額を超えて損失を負うことはありません。そのため、とくに株式会社は多くの人から出資をうけやすいといえます。

4. 決算月を自由に決定できる

決算とは、一定期間(事業年度)における収益・資産・負債などを計算して会社の財務状況を明確にすることをいいます。また、一定期間の期末にあたる月が決算月です。

個人事業主の場合、事業年度は1月1日から12月31日。決算月は12月と決まっており、その期間の決算をもとに3月の確定申告を行います。一方、会社は決算月を自由に設定することが可能です。つまり、決算月を自由に設定することで、繁忙期を避けたり業務の平準化をはかったりといったメリットが得られます。

4. 相続税がかからない

個人事業の場合、経営者が死亡すると財産すべてが相続の対象となります。相続税が課されるだけでなく、経営者の預金口座が一時的に凍結されて事業に支障が生じることも。

一方、会社(法人)は相続という概念がなく、相続税は課されません。さらに、法人口座は締結されないため従来どおりのビジネスが継続できます。ただし、株式会社では株式にあたる「法人への出資」を売却する方法で譲渡する場合は、譲渡益に課税されるため注意しましょう。

会社設立のデメリット

次はデメリットについて、以下の3点を説明します。

1. 赤字になっても法人住民税がかかる

会社には、法人税をはじめとした「所得に課される税金」と、法人住民税などの「所得とは無関係に課される税金」があります。つまり、赤字となった場合でも、7万円程度の法人住民税を納税しなければなりません。個人事業主には法人住民税が課されないため、そのぶん負担額が多いといえます。

2. 社会保険の強制加入

会社(法人)は、健康保険・厚生年金保険に加入する義務があります。たとえ社長1人の会社であっても、加入しなければなりません。個人事業主が加入することになる、国民健康保険・国民年金よりも支払金額が多いです。

また、健康保険・厚生年金保険の保険料は、会社側が半額負担する必要があります。従って、従業員が多ければ多いほど、支払う給料が高ければ高いほど、会社の負担額が増加するといえるでしょう。同時に、給与計算といった事務手続きが複雑になり、金銭的負担だけでなく事務的な負担も増えることになります。

3. 設立、解散にも費用がかかる

個人事業主は、費用をかけることなく事業を開始できます。一方、会社を設立するためには、定款認証の手数料・登記の手数料である登録免許税といった支払いが必要です。ほかにも、印鑑証明などの必要書類を入手する費用がかかります。株式会社は20万円程度、合同会社は10万円程度が必要だと考えるとよいでしょう。

さらに、法人の場合は解散にも費用がかかります。赤字で会社を解散させることを選択したとしても、40,000円程度かかることを留意しておくのがおすすめです。

まとめ

会社設立におけるメリットとデメリットを解説しました。個人事業主か会社設立か、どちらの事業形態が適しているかは、事業内容や収益などによって異なります。会社を設立するかどうかは、予想される収益から税金を計算したり従業員を雇うかどうかを考慮したりして、慎重に検討するのがおすすめです。

会社設立にかかる初期費用や具体的な税金額などは、税理士や会計士に相談してみるのもよい手段です。場合によっては、個人事業主として事業をスタートし、後に法人化するという選択肢もあります。広い視野で、会社を設立するかどうかを検討してみてください。

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