会社設立登記に関する必要書類を詳しく解説

会社設立登記に関する必要書類を詳しく解説

会社設立における登記手続きは、定款の作成後に行います。法人登記で必要書類は全11種類です。しかし、書類のなかには必ずしも必要でない書類があるため、ただ作成するだけでなく、作成が必要かどうかの判断もしなければなりません。
本記事では、必要書類それぞれの役割を解説します。役割を知れば、なぜその書類が登記手続きで必要なのかも知ることができるでしょう。スムーズな登記手続きを行うためにも、ぜひ参考にしてください

目次

会社設立登記に関する必要書類

株式会社や合同会社といった会社形態を問わず、全ての会社で必要となる書類は以下の7点です。必要書類をそろえて、法務局へ提出します。

  • 登記申請書
  • 登録免許税の収入印紙を貼付した台紙
  • 登記すべき事項
  • 定款
  • 取締役の就任承諾書
  • 払込証明書
  • 印鑑(改印)届出書

原則、各書類のサイズはすべてA4サイズで統一します。また、印鑑(改印)届出書は登記で必要となる印鑑証明書を請求するための申請書です。ほかの登記手続用書類とともに提出する書面ではありません。そのため、登記書類一式をまとめてホチキスでとじる際は、印鑑(改印)届出書はとじないように注意しましょう。

登記申請書

登記申請書とは、会社名(商号)・本店所在地・登録免許税の金額などを記載した書面です。法務局ホームページにて、登記申請書様式が確認できます。
また、登記を依頼する際は手数料である「登録免許税」が必要です。登録免許税の金額は、株式会社の場合は「150,000円」もしくは「資本金✕0.7%」のいずれか高い方。合同会社の場合は「60,000円」もしくは「資本金✕0.7%」のいずれか高い方が適用されます。
登記申請書に記載する項目は会社形態によって異なりますが、主な項目は以下のとおりです。

  • 商号(会社名)
  • 本店所在地
  • 目的(事業内容)
  • 課税標準の金額(資本金の金額)
  • 発起人(出資者)
  • 各発起人の出資額
  • 事業年度

登録免許税の収入印紙を貼付した台紙

登記を依頼する際に支払う手数料である「登録免許税」は、現金もしくは収入印紙で納付します。領収書もしくは収入印紙を提出する際に貼付する台紙となるのが、「登録免許税納付用台紙」です。ただし収入印紙を提出する場合、登録免許税法第25条により禁止されている事項があります。
禁止事項とは、収入印紙を汚すことや割印・消印を行うことです。収入印紙の額面の組み合わせは自由であるものの、禁止されている割印などを行ってしまった場合、その収入印紙は使用できません。

登記すべき事項

登記すべき事項は、「株式会社では会社法第911条第3項で、合同会社では会社法第914条によって定められている内容に該当している事項」を登記したい場合に必要となる、書面もしくは電磁的記録媒体のことです。
会社を設立する際は、会社概要などを登録する必要があるため、会社概要をまとめたものが「登記すべき事項」に該当します。
また、登記すべき事項は、A4用紙またはCD-RやDVD-ROMなどの「日本工業規格X 0606形式またはX 0610形式に適合する120mm光ディスク」のいずれかで別途作成しなければいけません。

定款

定款とは、会社概要や会社を運営するうえでの基本的なルールを定めた文書のことです。株式会社や合同会社などの会社形態を問わず、定款は必ず作成する必要があります。電子もしくは紙面、どちらで作成しても問題ありません。
ただし株式会社の場合、公証役場にて認証を受けたものでないと、正式な定款として認められないため注意しましょう。

取締役の就任承諾書

取締役(役員)の就任承諾書とは、取締役に就任することを承諾したと証明するための書面です。取締役は会社から委任を受けて就任するため、就任する際は本人の承諾が必要となります。従って、承諾したことの証明である取締役の就任承諾書は、各取締役の人数分必要です。

払込証明書

会社を設立する際には資本金が必要です。払込証明書は、資本金の払い込みが行われたことがわかる書類を指します。資本金の払い込みを行う者は、発起人・出資者・取締役であり、払い込み先は発起人個人の銀行口座です。発起人が複数いる場合は、発起人総代の個人口座を用意して払い込みます。
払込証明書となるものは、通帳の表紙・表紙裏・払い込み金額と払い込みをした者の氏名がわかる箇所を紙面に出力したもの(コピー)です。書類のサイズに定めはありませんが、A4用紙で作成するのが一般的とされています。

印鑑(改印)届出書

印鑑届出書とは、会社の実印を届け出するために必要な書類です。会社の実印を作成したら、法務局に印鑑届出書を提出して印鑑登録を行い、印鑑証明書を発行しましょう。地区町村で登録する個人の印鑑登録と同じ意味合いをもちます。
登記の際に提出する印鑑証明書の枚数は、次のとおりです。

株式会社の場合

出資する発起人の全員分1通・代表取締役1通・取締役の全員分1通

合同会社の場合

代表社員1通

会社設立登記で場合によっては必要となる書類

登記において、会社概要によって追加で必要となる書類があります。必要な書類があるかどうかは、自身で判断することになるのです。一見難しいように思えますが、定款を確認しながら判断すれば比較的容易に進めることができます。
以下は、場合によっては必要となる書類4点です。

発起人の決定書

発起人の決定書とは、発起人全員の合意のもとに、本店所在地が決定されたことを証明する書面のことです。発起人の決定書の作成は必ずしも必要であるとは限りません。必要か不要であるかは、定款に記載した本店所在地の表記によって異なります。
そもそも定款に記載する本店所在地は、所在地すべてを記載せずとも、最小行政区画である市町村まで記載すれば問題ないとされています。つまり、◯丁目◯番地まで記載する必要はないということです。定款を作成した際、番地を含めたすべての所在地を記載していれば、発起人の決定書は必要ありません。
一方、最小行政区画である市町村までしか記載していなかった場合、発起人の決定書の作成が必要です。発起人の決定書によって、番地まで含めた所在地を定めて届け出ます。

代表取締役の就任承諾書・監査役の就任承諾書

先に紹介した、全ての会社で作成が必要である「取締役の就任承諾書」とおおむね同じ意味合いをもっています。代表取締役の就任承諾書が必要となる場合は、複数いる取締役(役員)のなかから1名を代表取締役に就任させるケースです。代表取締役の就任承諾書によって、誰が代表取締役に就任したのかを明確にします。
一方、代表取締役の就任承諾書を作成せずとも、誰が代表取締役になるかが明確である場合は、代表取締役の就任承諾書は不要です。たとえば、取締役が1名だけの場合があげられます。取締役が1名の場合、自動的にその取締役が代表取締役に就任するからです。
また、監査役の就任承諾書は、監査役を設置しないのであれば不要です。監査役とは、取締役の職務を監査する役割をもちます。従って、取締役を設置していない場合、監査役を設置する必要はなく、同時に監査役の就任承諾書も不要であるということです。監査役を設置し、監査役に誰かが就任する際は、監査役の就任承諾書を作成しましょう。

取締役全員の印鑑証明書

取締役会を設置しない会社の場合、取締役全員の印鑑証明書が必要です。一方、取締役会を設置している場合は、代表取締役の印鑑証明書のみで問題ありません。

合同会社設立時の必要書類

合同会社とは、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルに導入された会社形態です。出資者が会社の経営者である、持分会社に該当します。
株式会社と同じく資本金1円から会社設立できるだけでなく、合同会社は1人だけで設立可能です。さらに、出資した社員全員に会社の決定権があることから、株式会社よりも意思決定の早い運営ができます。また、決定権をもつのは出資した社内の人間であるため、決算の公示なども不要です。
合同会社の最大のデメリットは、株式会社よりも社会的な信頼性がやや低く、株式上場ができない点があげられます。さらに、金融機関からの融資範囲が狭いといえるでしょう。
一方、合同会社の最大のメリットは、登記をはじめとした会社設立にかかる費用が安価ですむ点にあります。株式会社では20万円程度かかる会社設立費用も、合同会社では6万円程度の出費で抑えることが可能です。
従って、株式会社よりも会社設立のハードルが低いといえるでしょう。

合同会社設立の必要書類

合同会社を設立する際に求められる書類は、株式会社設立よりも少ないです。また、株式会社と合同会社で、使用する登記申請書が異なるため注意しましょう。
合同会社設立に必要な書類は以下のとおりです。

  • 合同会社設立登記申請書
  • 登録免許税の収入印紙を貼付した台紙
  • 定款
  • 代表者印、本店所在地及び資本金を決定したことを証明する書面
  • 代表社員の就任承諾書
  • 印鑑証明書
  • 資本金の額の計上に関する代表社員の証明書
  • 委任状(代理人が申請する場合のみ必要)

株式会社と同じく、合同会社も定款の作成・提出が必要です。ただし、公証役場からの認証を受ける必要はありません。

必要書類を法務局へ提出して手続き完了です

登記は、会社設立するうえで必須の手続きです。書類に不備があれば法務局から、訂正を求める「補正」もしくは申請の「取り下げ」が指示されます。手間が増えるだけでなく、事業活動に支障をきたす恐れも。スムーズに会社設立するためにも、事前に必要書類を確認することが大切です。
必要書類を正しく準備・記載し、不備のない状態で法務局へ提出しましょう。

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