会社設立登記手続きについて登記前後にわけてわかりやすく解説!
会社を設立する際、登記手続きは必須です。とはいえ、登記は会社設立時における手続きのなかでもっとも複雑だと感じる方も少なくありません。今回は、株式会社の登記手続きにおいて、事前に準備しておくこと、登記の手続き、登記後に行うことなど、段階にわけて解説します。あわせて、郵送で入手可能な書類なども紹介しますので、事業開始後にも役立てていただける内容でしょう。
「登記手続き前」に行う必要のある手続きとは?
会社設立の登記手続きを行う前に、必要な手続きがあります。事前に行うべき手続きを行っていなければ、登記手続きを行うことができません。二度手間にならないためにも、事前の手続きをしっかり確認しましょう。
会社概要を決定したうえで定款を作成する
会社を設立するうえで、会社の事業内容やルールを明記した定款を作成する必要があります。定款には、「どのような会社であるのか」を記載しなければいけません。以下の事項は絶対的記載事項です。必ず定款に記載する必要のある事項であるため、しっかりと決めたうえで定款を作成しましょう。
- 商号(会社名)
- 会社の目的
- 本店所在地
- 資本金額
- 発起人(出資者)
- 発行可能株式総数
- 各発起人の出資額
- 設立時に発行する株式数
- 株式譲渡制限の有無
- 事業年度
- 設立時取締役や代表取締役
公証役場にて定款の認証を受ける
公証役場に定款を提出し、定款の認証を受けます。認証を受けることで有効な定款として認められるのです。定款の認証には手数料かかり、資本金によって手数料が異なります。手数料は30,000円から50,000円です。
資本金の払い込み
資本金の払込先は発起人個人の銀行口座です。発起人が複数いる場合は、代表となる発起人の銀行口座に払い込みます。払い込んだあとは、払い込みの事実が確認できるように通帳をコピーしておきましょう。
会社印の作成および登録(印鑑証明書の取得)
会社印(代表印)を作成します。直径18mmの丸印が定番であるものの、10mmから30mmの正方形に収まる大きさであれば問題ありません。作成した会社印は、法務局に印鑑届出書を提出して登録を行います。会社印の登録は、地区町村で登録する個人の印鑑登録と同じ意味合いだと考えてよいです。会社印の登録が済んだあとは、印鑑証明書を取得しましょう。
また、登記の手続きは印鑑登録と同じく法務局で行います。従って、登記の手続きの際に印鑑登録をあわせて行う方も多いです。ただし、印鑑登録の手続きを本人(代表取締役もしくは取締役)が行う場合と代理人が行う場合で、必要なものが異なります。
以下は、本人(代表取締役もしくは取締役)が届け出する際に必要なものです。
・会社印
・印鑑提出者(代表取締役・取締役)の実印
・印鑑提出者(代表取締役・取締役)の印鑑証明書(発行から3か月以内)
代理人が届け出する際は上記に加えて、印鑑提出者(代表取締役・取締役)による委任状が必要です。
登記手続きをするうえでの事前準備とは?
登記の手続きにはいくつかの書類が必要です。さらに、商業登記法で定められたとおりに書類を作成しなければいけません。事前にしっかりと確認して準備を進めましょう。以下は、登記に必要な書類です。
- 登記申請書
- 登録免許税の収入印紙を貼付した台紙
- 登記すべき事項(書面もしくはCD-ROMなどの電子記録媒体)
- 認証済みの定款
- 取締役の承認承諾書
- 資本金の払込証明書
- 印鑑証明書
場合によって、以下の書類も必要です。
・発起人の決定書
・代表取締役の就任承諾書
・監査役の就任承諾書
・取締役全員の印鑑証明書(取締役を置かない会社の場合のみ必要)
原則的に、各書類はA4サイズで統一します。また、とくに注意すべき書類は、「登録免許税の収入印紙を貼付した台紙」です。登録免許税は登記を依頼する際の手数料ですが、現金もしくは収入印紙で納付します。収入印紙を台紙に貼付して提出する際は、収入印紙に割印・消印してはいけません。割印・消印してしまった場合、その収入印紙は無効となってしまうので注意しましょう。
必要書類について、それぞれの詳細を知りたい場合は以下の記事をご確認ください。
登記手続きで行う内容とは?
会社設立の登記手続きは、会社の本店所在地を管轄している法務局で行います。原則、資本金を全額払い込んでから2週間以内に申請しなければいけません。また、登記申請後、登記完了までに1週間から2週間ほどかかり、登記が完了すれば連絡が入ります。
もし、登記申請に準備した書類に不備があった場合は、訂正作業を求める「補正」、もしくは申請の「取り下げ」が指示されるため速やかに従いましょう。指示に従わなかった場合、申請が却下されます。却下されると、申請に使用した書類一式は返却されません。再度、手数料などを支払って手続きすることになるため、注意が必要です。
「登記手続き後」に取得すべき書類とは?
登記完了したあとは、法務局にていくつかの手続きを行います。法人口座の開設や、税務署などへの届出をする際に必要となるため、忘れずに行いましょう。また、後述しますが、一部は郵送やオンラインでも手続き可能です。
登記事項証明書の取得
登記事項証明書とは、登記した事項の全部もしくは一部を証明する書類です。管轄の法務局や、最寄りの法務局の窓口で入手できます。
登記事項証明書は、税務署や各自治体、社会保険事務所に会社を設立したことを申請する際に必要です。ほかにも、法人口座の開設やクレジットカードの作成、事務所の賃貸契約を結ぶ際にも使用します。あらかじめ、複数枚取得しておくとよいでしょう。
登記事項証明書の発行手数料は600円です。
法人印鑑カードの取得
会社印の印鑑証明書を取得する際に必要となる、印鑑カードを取得します。管轄の法務局、もしくは支局や出張所の窓口にて印鑑カード交付申請書を提出しましょう。費用がかからないだけでなく、必要事項も簡単です。商号(会社名)や、本店の住所を記載して押印するだけで申請できます。ただし、代理人が申請する際は委任状が必要です。
また、印鑑証明書の取得を代理人に依頼する際、印鑑カードが委任の証明になります。印鑑カードがあれば、会社の代表者以外でも印鑑証明書の取得が可能です。
法人印鑑証明書の取得
登記手続きの際にも取得した、印鑑証明書を再度取得します。会社印を押印する際にあわせて利用することが多いです。たとえば、不動産の売買契約や所有権の移転登記を行う場合や、金融機関からの借入契約や取引先との新規取引契約する場合があげられます。
印鑑証明書は、押印に使用した実印が本物であることの証明や、契約書類が真正なものであることの証明です。従って、重要な契約や多額な取引を行う際、印鑑証明書の貼付を求められる傾向にあります。
会社設立したばかりでは、印鑑証明書を使用することが多いです。あらかじめ複数発行しておくのもよいですが、一般的に発行から3か月以内の証明書が求められます。従って、過剰に申請し保有しておくのはあまりおすすめできません。
法務局のなかには、印鑑証明書の発行が自身で行える電子端末が設置してあるところがあります。電子端末を利用すれば、窓口にて申請書を提出する手間が省けるでしょう。このとき、印鑑カードと発行手数料の450円が必要です。
事前に、最寄りの法務局に電子端末があるかどうかを確認しておくと、スムーズに印鑑証明書が取得できます。
登記後に取得する書類は郵送やオンラインでも取得可能
登記後に取得する登記事項証明書と印鑑証明書は、オンラインでも交付申請できます。登記事項証明書と印鑑証明書は、新たな契約を結ぶ際などに使用することもあるため、申請する機会が多いです。そのため、郵送での受取も可能なオンラインでの取得方法を覚えておくとよいでしょう。
詳しくは、法務省のホームページの確認がおすすめです。
登記事項証明書のオンライン交付申請
登記事項証明書は、事前準備の必要なくウェブ上で申請できます。登記事項証明書を発行する際の発行手数料は以下のとおりです。
・郵送での受取:500円
・窓口での交付:480円
印鑑証明書のオンライン交付申請
印鑑証明書を申請するには、事前に印鑑カードの取得と、申請用のソフトウェア(申請用総合ソフト)の事前ダウンロードが必要です。受取方法は郵送、もしくは窓口での交付のいずれかが選択できます。それぞれの発行手数料は以下のとおりです。
・郵送での受取:410円
・窓口での交付:390円
オンラインにて交付申請しておけば、窓口での待ち時間の短縮が期待できます。ただし、最寄りの法務局に印鑑証明書の発行が可能な電子端末が設置されている場合は、電子端末を利用するほうがスムーズでしょう。