合同会社のメリット・デメリット・設立の流れをすべて解説

合同会社を徹底解説/特徴・メリット・デメリット・設立の流れをすべて解説

日本にある企業の主流である株式会社に次いで設立されているのが、合同会社です。2006年から取り入れられた事業形態は、着実にその数を増やしています。2020年においては、新しく設立された会社の25.3%を合同会社が占めたほどです。

今回は、合同会社の特徴だけでなく、なぜ合同会社を選択している会社が多いかの解説も行います。メリット・デメリットを把握し、あわせて紹介する設立の流れを知ることで、より具体的に合同会社を設立したときのイメージがつかめることでしょう。

目次

合同会社とは

合同会社は、出資者と経営者が同じ会社を指します。出資者と経営者が別である株式会社と比較すると、その特徴がわかりやすいでしょう。

合同会社の場合、出資したすべての社員に会社の決定権があります。つまり、株式会社のように株主総会を開くことなく、社員だけで会社の経営方針などを決定することが可能です。株式会社と比較すると会社運営の決定がスピーディーであり、事業や会社に詳しい内部の人間だけで経営方針を決定できるといえます。

また、合同会社は2006年の新会社法によって新しく設けられた会社形態です。株式会社をはじめとする従来からある会社形態よりも会社設立のハードルが下げられており、日本の起業を促す目的で設けられました。

会社設立の負担が軽減された合同会社は、設立費用が低く、組織設計がシンプルです。そのため、小規模な会社やBtoCの会社に向いているといわれています。

会社形態が合同会社である大企業とは

合同会社は、日本において株式会社に次ぐ設立数を誇ります。言い換えれば、人気のある会社形態です。一般的に、会社設立の条件や特徴から合同会社は小規模の会社に適しているといわれています。しかし、合同会社のなかにも大企業はあるのです。会社形態が合同会社である大企業を2社紹介します。

アマゾンジャパン合同会社

アマゾンジャパン合同会社は、ECサイトのなかでも最大手といわれている「Amazon.co.jp」の運営会社です。米企業である「Amazon.com」の日本法人として設立され、いまや日本のECサイト業界を支えているといっても過言ではないでしょう。

実は、アマゾンジャパン合同会社のように、株式会社ではなく合同会社として日本法人を設立する外国企業は少なくありません。たとえば、スーパーマーケットの西友やAppleも合同会社のひとつです。

合同会社DMM.com

オンラインゲームや動画サービスを提供している、合同会社DMM.comも合同会社のひとつです。創業から20年ほどで2,000億円以上の売上を達成しています。

しかし、合同会社DMM.comは設立当初、合同会社ではなく株式会社でした。合同会社の特徴を鑑みたうえで経営の効率化を図るために、2011年に合同会社へと組織変更したのです。

ほかにも、会社形態のひとつに合同会社が加わったことで、株式会社から合同会社に組織変更した企業があります。日本でもっとも利用されている検索エンジンの提供元であるGoogleの日本法人も、合同会社に組織変更した企業のひとつです。つまり、合同会社という会社形態は、企業からも選ばれるメリットがあるといえるでしょう。

合同会社と株式会社の違い

以下は、合同会社と株式会社の違いをまとめた表です。

 合同会社株式会社
会社の所有者社員(出資社員)株主
経営者代表社員もしくは出資社員全員取締役
会社の代表者社員(出資社員)総会株主総会
意思決定社員(出資社員)総会株主総会
所有者と経営者同一分離
設立費用約10万円約20万円
株式発行不可発行可能
利益配分自由出資額に応じる
定款認証不要認証必要
決算公告不要必要
役員の任期更新必要不要
監査役の人数1人以上(取締役会設置会社の場合)不要

創業手帳にて合同会社と株式会社の設立数を比較したところ、ほぼ同じ数が設立されていることがわかりました。また、株式会社を選択した会社は大きな成長と多くの資金集めに成功していることが多いです。一方、小規模の会社から多く選ばれており、自由度が高く独自の事業を展開している傾向にあります。

混同されやすい有限責任事業組合と合同会社の違い

合同会社は、Limited Liability CompanyからLLCと表記されます。直訳すると、有限責任会社という意味です。事業形態などに明るくない方のなかに、合同会社LLCに似た表記であるLLPと混同してしまう方がいます。

LLPはLimited Liability Partnershipの略称であり、有限責任事業組合のことです。どちらも出資した者は出資した金額だけの責任を負い、それを超える責任を負う必要はありません。似た点も多いですが、大きな違いは、会社(法人)であるかどうかです。LLCは法人であり、LLPは法人ではありません。

有限責任事業組合(LLP)には法人税が課せられないというメリットがありますが、法人のみ許可されている事業許可の取得などができないというデメリットもあわせもちます。すでに会社を設立している方が別プロジェクトを立ち上げるときは有限責任事業組合(LLP)を選択し、それ以外は合同会社(LLC)を選択するとよいでしょう。

合同会社設立のメリット

大企業からも選ばれる合同会社のメリットを紹介します。個人事業主と比較した際のメリットと、株式会社と比較した際のメリットをそれぞれ知りましょう。

個人事業主と比較した場合の合同会社のメリット

個人事業主が、自身の事業を法人化するケースは少なくありません。法人化とは、合同会社や株式会社に事業形態をかえることを指します。個人事業主が合同会社へ事業形態をかえることで得られるメリットは以下のとおりです。

節税できる

個人事業主の所得には所得税が、合同会社の所得には法人税が課税されます。個人事業主の所得税は、所得が増えれば増えるだけ税率が高くなる累進税率制度です。税率は所得に応じて5%から45%課されます。一方、合同会社の法人税は、所得が増えたとしても原則税率は変わりません。所得が800万円以下であれば税率22%、所得が800万円以上なら税率30%が課されます。所得が増えたぶんだけ、節税効果が強くなるのです。

また、資本金が1,000万円未満に抑えるなどの条件がクリアできれば、最大2年間、消費税の納税が免除されます。さらに、合同会社は個人事業主とは異なり事業に関する相続税が発生しません。事業用の財産は会社の財産とみなされるため、相続税の対象外になります。

これらは個人事業主では受けられない節税ポイントだといえるでしょう。

決算日を自由に設定できる

個人事業主の決算日は12月31日です。毎年1月1日から12月31日までの確定申告を、翌年3月15日までに申告して納税しなければなりません。一方、合同会社の場合、決算日を自由に設定可能です。資金繰りを考慮したり、繁忙期を避けたりすることができます。

責任を負う範囲が定められている

事業を行ううえで、なんらかの出来事で負債を負うこともないとはいえません。個人事業主の場合、出資額以上の負債を負う可能性があります。一方、合同会社は出資額以上の負債を負う必要はありません。

責任が有限であるか無限であるかは、事業を行ううえで無視できない問題です。従って、責任が有限である合同会社のほうが、リスク面において優れているといえるでしょう。

株式会社と比較した場合の合同会社のメリット

つづいて、株式会社と比較した場合の合同会社のメリットを解説します。合同会社DMM.comをはじめとする大企業が、株式会社から合同会社に組織変更した理由でもあるでしょう。

会社設立にかかる費用が低額

日本の起業を促す目的で設けられた合同会社は、会社を設立するうえでの金銭的負担が少ないです。日本の主流である株式会社と比較すると、以下に低額で設立できるかが理解できるでしょう。以下は、会社設立手続きにおける法的費用を比較した表です。

ほかにも会社実印の作成費用や、手続きに必要な印鑑証明書の取得費が必要です。とはいえ、合同会社を設立する際にかかる費用は、株式会社よりも10万円程度は低額であるといえます。

意思決定が早いだけでなく経営の自由度も高い

株式会社は、株主総会によって株主の意見を確認したうえで会社の方針を決定します。一方、合同会社は社員のみで会社の方針を決定することが可能です。業務内容に詳しく、さらには会社内で会社の方針を決められるため、株式会社よりもスピーディーかつ自由に意思決定できます。

とくに、外部からの影響を受けやすい事業や、変動のはげしい市場に参入している事業では、株式会社よりも柔軟に対応できるといえるでしょう。

利益配分を決める際に出資額は関係ない

株式会社の場合、所有している株式の数に応じて配当が決まります。つまり、多く出資した者がより多くの利益を得られるということです。しかし、合同会社には株式がありません。従って、出資額だけでなく会社への貢献度なども考慮したうえで利益が配分されることになります。利益配分を自由に決定できることは、合同会社のメリットのひとつです。

合同会社設立のデメリット

合同会社はメリットばかりではありません。日本では株式会社が主流である理由ともいえます。つづいて、個人事業主と比較した際のデメリットと、株式会社と比較した際のデメリットをそれぞれ把握しましょう。

個人事業主と比較した場合の合同会社のデメリット

個人事業主と合同会社を比較した場合、社会的信用度が高いのは合同会社です。しかし、優れているわけではありません。合同会社は、個人事業主と比較するとやや金銭面にデメリットを抱えているといえるでしょう。

合同会社は設立する際に費用がかかる

個人事業主は、開業するにあたり特別な費用はかかりません。一方、合同会社は会社設立の手続きを行う必要があり、費用も10万円ほどかかります。開業する際の費用にのみ着目すると、解説費用は大きな出費だといえるでしょう。

赤字であっても支払う税金がある

詳しくは後述しますが、合同会社には法人住民税とよばれる税が課されます。法人住民税は所得に関係なく、一定の金額を納める必要があるのです。赤字であった場合にも支払う必要があるため、運営が軌道にのっていない場合は大きな負担になる恐れがあります。

株式会社と比較した場合の合同会社のデメリット

合同会社は、アメリカの事業形態を手本にし、日本の起業を促すことを目的に取り入れられました。とはいえ、会社設立のしやすさがデメリットにもつながっているのです。株式会社と比較した場合のデメリットとして、以下の3つがあげられます。

株式による資金調達や上場ができない

株式がないため、合同会社は株式による資金調達や上場ができません。株式はひとつの大きな資金調達の手段であり、上場は事業拡大しやすい場です。従って、会社を大きくしていきたい会社には適していない事業形態だといえます。

株式会社と比較して社会的信用度が低い

合同会社は会社設立のハードルを低くした事業形態です。第三者からの出資をはじめとして、株式会社のほうが合同会社よりも安定した運営が期待できると判断される傾向にあります。金融機関からの融資の範囲が狭く、株式会社よりも資金繰りがむずかしい恐れがあるでしょう。

利益の配分や仕事の貢献度などによるトラブルが懸念される

合同会社は、出資社の利益配分を自由に設定できます。株式会社のように出資額に応じて利益配分が決定しないため、ある意味では平等です。しかし、自由であるからこそトラブルに発展する恐れが考えられます。

さらに、発起人が取締役(役員)を務めるため、運営の決定権をもつのが合同会社の特徴のひとつです。業務の責任・貢献度・やパワーバランスなどの配分に不満が募る可能性もあるでしょう。

合同会社が向いている会社と向いていない会社とは

合同会社は、日本での起業を促すために取り入れられた事業形態です。設立のハードルが下げられているため、コンパクトな事業に適しているといえます。合同会社に適している会社は以下のとおりです。

・BtoCビジネスなど、株式会社というブランドが不要である会社
・設立費用を抑えたい会社
・株主総会や決算公告などの手続きをしたくない会社
・資本金をあまり必要としていない会社

一方で以下のような会社は合同会社に向いていないといえます。

・より多くの資本金を集めたい会社
・事業売却を視野にいれている会社

合同会社は、株式会社と比較して第三者からの出資が受けにくいです。また、金融機関からの融資額もやや少ない傾向にあります。会社設立時にかかる費用や、会社設立手続きに必要な書類の数といった目先だけで判断せず、将来を見据えて事業形態を検討しましょう。

合同会社を設立する手順について

合同会社を設立するための手順は5つです。最後の手順である法人登記の申請日が設立日となるため、設立日に希望がある場合は逆算して進めるとよいでしょう。

株式会社の設立手続きと比較して、手順や必要書類が少ないものの複雑な手続きです。手続きで不備が生じないように、専門家に依頼するのもおすすめです。

合同会社の概要を決定し、定款を作成する

合同会社を設立する際、まずは会社の概要やルールを決める必要があります。決定する概要は、会社運営に関わってくるだけではなく、会社設立手続きにも影響を与える事項です。その後、決定した会社の概要や会社のルールをまとめて記載する定款を作成します。定款は必ず作成しなければならない書類であるため、注意しましょう。

また、定款に記載すべき事項は、会社に異なります。しかし、絶対的記載事項と呼ばれる、必ず明記しなければならない事項があります。必ず決定しなければならない事項は以下の6つです。

商号

会社名を商号といいます。会社名のなかに使用できる文字にはルールが設けられているだけでなく、管轄法務局の対応エリア内で同じ会社名を使用することができません。

目的

設立する合同会社の事業内容を指します。目的として定められた事業以外を行うことは法律で禁止されているため、注意が必要です。事業内容は複数定めても問題ないため、あらかじめ複数の事業内容を定めておくのもよいでしょう。

本店所在地

本店が所在する住所です。表記方法に指定がないため、「1丁目2番地」の表記であっても「1-2」といった表記でも認められます。

資本金の額(社員の出資する目的とその価額)

会社を設立する際、資本金は必要です。資本金として用意した金額や、社員ごとの出資額を決定します。

社員(出資者)の氏名と住所

合同会社の社員は、必然的に出資者であり経営者となります。この社員とは、株式会社のような従業員と同じ意味合いをもつ社員ではないため注意が必要です。合同会社の設立に関わる社員という認識に近いでしょう。

社員(出資者)が間接有限責任社員であることの証明

社員は出資した範囲でのみ責任を負うことを明記する事項です。仮に事業に失敗して負債を負った場合であっても、出資額以外を負担する必要はありません。合同会社では、それを明記する一文が必要なのです。

そのほかの事項

絶対的記載事項以外に記載する事項があります。たとえば、設立日や事業年度、社員が退職する際の取り決めなどです。決めた際は必ず定款に記載しなければならない相対的記載事項、任意で記載する任意的記載事項などがあり、会社法27条・会社法28条・会社法29条に基づいて記載します。

印鑑作成

合同会社を設立する際、設立に関わる社員の実印や法人実印などをはじめとする印鑑が必要です。もし金融機関で法人口座を設立したいのであれば、法人銀行員も作成します。印鑑作成には数日要するため、余裕をもって作成依頼をしておくのがおすすめです。

法人実印・法人銀行員、そして契約書などで使用する角印の3点で、1万円以上かかると予想しておくとよいでしょう。

資本金の払込み

合同会社だけでなく、会社を設立するには資本金を準備する必要があります。資本金には上限・下限はありません。資本金の払い込み先は、設立に関わる社員の代表1名の個人口座です。誰が何円払い込んだかがわかるように、氏名などは正確に明記するようにしましょう。

資本金の払い込みが完了したあとは、自身で資本金の払込証明書を作成します。払込証明書に決まった書面や書式はありません。A4用紙に「払込証明書」「当会社の資本金については以下のとおり、全額の払込みがあったことを証明します」の文言ととともに、金額・日付・代表者印の氏名と押印します。あわせて、通帳のコピー(金融機関情報・金額)を貼付すれば作成可能です。

法人登記書類の準備

法人登記に向けての準備を行います。原則、登記手続きは資本金を全額払い込んでから2週間以内に行う必要があるため注意しましょう。法人登記で提出する書類は定款を確認しながら、相違のないように作成を進めます。法人登記に必要な書類は以下の9つです。

登記申請書

決まった申請書を用いて、登記したい会社の概要を記載します。基本的に、定款の内容を書き写すだけです。とはいえ、登記申請書に不備があれば申請を受け付けてもらえません。ミスがないように記載しましょう。

登録免許税納付用台紙

登記には手続きの手数料がかかります。手数料は、「60,000円」もしくは「資本金✕0.7%」のいずれか高い額です。現金にて支払い、領収書を貼付して提出します。

定款

作成した定款を提出するだけで構いません。株式会社の場合は、定款を公証役場に提出し認証を受けなければ有効な定款と認められませんが、合同会社は認証不要です。

発起人の決定書

合同会社の設立の発起人を決定します。発起人の氏名や押印もあわせて必要です。

取締役の就任承諾書

取締役とは、役員のことです。決定した取締役の役名と氏名をすべて記載したうえで、本人が取締役に就任することを了承している書類を作成します。

取締役の印鑑証明書

取締役に就任する人すべての印鑑証明書を入手します。実印の印鑑登録の提出や印鑑証明書の取得は各自治体の区役所などで可能です。

資本金の払込証明書

資本金を払込んだ際に作成した証明書が該当します。定款に記載した金額と、払込証明書で証明する金額が一致するかを確認しましょう。

法人印鑑届出書もしくは法人印鑑証明書

登記手続きには、法人実印の印鑑証明書が必要です。登記の手続きと、法人実印の登録・証明書の発行はともに法務局で行います。そのため、法人実印を登録していない場合は登記手続きを行うと同時に、法人印鑑を届け出て、あわせて法人印鑑証明書を取得するのがおすすめです。

登記すべき事項

登記を依頼する事項を、CD-Rなどをはじめとする電子記録媒体にまとめます。会社設立時は、会社の情報はなにも登記されていません。従って、登記すべき事項には会社の概要が該当します。もし事業を運営していくうえで登記内容を変更したい事項ができた場合は、変更したい事項が、登記すべき事項に該当するのです。

法人登記手続き

法務局で法人手続きを行います。申請後、1週間から2週間程度で登記完了です。もし書類に不備があった場合は、訂正や再提出を求められます。速やかに対応しましょう。

合同会社を設立する際、登記完了までの手続きを専門家に依頼することもできます。もちろん、自身で手続きすることも可能です。とはいえ、さまざまな書類を入手し作成する必要があるため、時間と労力を費やしてしまうことでしょう。

依頼料がかかるものの、専門家に依頼することで不備なく会社設立が進んでいくといえます。安心感を得る意味合いでも、専門家への依頼は有効的です。

合同会社の設立手続き完了後に行うこととは

合同会社を設立する際の登記完了までの手続きは、あくまで合同会社設立の許可を得るために行うものです。合同会社を運営するにあたって必要な手続きを別に行う必要があります。手続きの期限が定められている手続きもあるため、期限に注意して行いましょう。

以下は、設立手続き完了後に行う手続きです。これらの手続きのなかには、法務局で取得する証明書を使用するものがあります。各機関で手続きをはじめる前に、法務局で法人印鑑証明書と登記事項証明書を入手するのがおすすめです。

法人印鑑証明書を取得するには、印鑑カードを交付してもらう必要があります。印鑑カードを取得すれば、次回以降の法人印鑑証明書の取得がスムーズになるでしょう。

年金事務所での手続き

会社を設立した際、たとえ社長1人のみの会社であっても届け出する必要があります。年金事務所では、健康保険・厚生年金の加入手続きを行いましょう。

 必要書類手続き期限手続きが必要なケース
健康保険・厚生年金保険新規適用届・会社の登記簿謄本(原本) ・法人番号通知書のコピー会社設立から5日以内会社を設立した後に必ず行う手続き
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届原則なし被保険者資格を取得してから5日以内従業員を雇用した際に必要な手続き
健康保険被扶養者(異動)届・戸籍謄本 ・年収が130万円未満を証明できる書類被保険者に扶養者がいる場合、被保険者を取得してから5日以内雇用した従業員に被扶養者がいる際に必要な手続き

税務署での手続き

会社の本店所在地の管轄税務署で手続きを行います。会社設立前に個人事業主として開業届を提出していた場合は、廃業届を提出しなければなりません。

 必要書類手続き期限手続きが必要なケース
法人設立届出書・会社の登記簿謄本(原本) ・定款の写し ・法人番号通知書のコピー会社設立から2か月以内会社を設立した後に必ず行う手続き
青色申告の承認申請書原則なし会社設立から3か月以内会社を設立した後に必ず行う手続き
給与支払事務所等の開設届出書原則なし会社設立から1か月以内会社を設立した後に必ず行う手続き
源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書  原則なし適用させたい前月従業員を雇用した際に必要な手続き (従業員総数10名以下の会社のみ)

給与支払事務所等の開設届出書

会社が役員や従業員に給与を支払うことを届け出る書類です。たとえ、社長1人の会社であっても報酬を支払う・報酬を得るのであれば提出します。

源泉徴収税の納期の特例の承認

必須の手続きではありません。授業印を雇用した際におすすめする手続きです。原則として、源泉所得税は翌月10日までに納付します。源泉徴収税の納期の特例の承認の手続きを行うことで、毎月の納付作業を半年に1回(年2回)にまとめることが可能です。

ただし、従業員が10名未満の会社にのみ認められている制度であるため注意しましょう。

市区町村役場での手続き

会社の本店所在地のある市区町村役場で行う手続きです。法人住民税と法人事業税の納税義務を果たすために行います。

 必要書類手続き期限手続きが必要なケース
法人設立届出書 (市区町村により名称が異なる)・会社の登記簿謄本(原本) ・定款の写し提出場所によって異なる提出場所によって異なる

都道府県事務所での手続き

会社の本店所在地のある都道府県事務所で行う手続きです。納税義務を果たすために行います。

 必要書類手続き期限手続きが必要なケース
法人設立届出書 (市区町村により名称が異なる)・会社の登記簿謄本(原本) ・定款の写し提出場所によって異なる提出場所によって異なる

労働基準監督署での手続き

従業員を雇った際、労働基準監督署で手続きを行います。会社の本店所在地の管轄労働基準監督署で、労災保険・雇用保険へ加入しましょう。

 必要書類手続き期限手続きが必要なケース
労働保険関係成立届会社の登記簿謄本(原本)  従業員を雇用した翌日から10日以内従業員を雇用した際に必要な手続き
労働保険概算保険料申告書原則なし従業員を雇用後50日以内従業員を雇用した際に必要な手続き
就業規則(変更)届就業規則を作成して提出すみやかに届け出る従業員を10人以上雇用した際に必要な手続き
適用事業報告書原則なし遅延なく提出従業員を雇用した際に必要な手続き

ハローワークでの手続き

労働基準監督署での手続きが完了したあと、会社の本店所在地の管轄ハローワークで手続きを行います。

 必要書類手続き期限手続きが必要なケース
雇用保険適用事業所設置届・会社の登記簿謄本(原本) ・雇用契約書 ・労働基準監督署での手続き控え従業員を雇用した翌日から10日以内従業員を雇用した際に必要な手続き
雇用保険被保険者資格届・会社の登記簿謄本(原本) ・雇用契約書 ・労働基準監督署での手続き控え従業員を雇用した翌日から10日以内従業員を雇用した際に必要な手続き

合同会社設立後の資金調達の方法とは

会社を設立・運営するうえで、資金は必要不可欠です。たとえば、株式会社の代表的な資金調達の方法のひとつに、株式があげられます。会社運営に直接的に関わっていない第三者からの出資が資金です。一方、合同会社の場合、設立に関わった社員の出資金が一般的な資本金とであり運営資金となります。

とはいえ、合同会社は第三者からの出資が受けられないわけではありません。定款にて定めることで、業務に関係のない者からの出資を得ることもできます。ほかにも、補助金・助成金を活用することで資金の調達が可能です。

安定した会社運営のためにも、リスク回避のためにも、つぎに紹介する資金調達の方法を確認しておきましょう。

金融機関からの融資

会社を運営するにおいて、金融機関からの融資は重要です。とくに、運営後2年から3年のあいだに融資を希望する会社が少なくありません。金融機関から融資を希望する際は、事業の戦略や収益みこみを説明するための事業計画書や、資本金が記載されている定款・履歴事項全部証明書などの書類が必要です。金融機関は、融資額が滞りなく回収できる会社であるかどうかを判断したうえで融資額を決定します。

とはいえ、融資を希望する際に必要な書類や審査基準は金融機関それぞれです。場合によっては、いくつかの金融機関で融資を希望してみるのもよいでしょう。また、以下は創業期であっても受けられる融資です。創業期の不安定な運営を支えるためにも活用できると予想できます。

合同会社におすすめの補助金・助成金

合同会社が受けやすい補助金と助成金があります。補助金や助成金の多くが、返済義務のないものです。補助金などを受けるための条件や審査は厳しいものの、申請しない手はないでしょう。

つづいて、合同会社を設立した際におすすめの補助金と助成金を紹介します。

創業助成金

創業助成金は、それぞれの自治体で展開している助成金です。東京都の創業助成金であれば、創業にかかった経費の一部を最大300万円支援するという内容で、年に2回募集しています。対象は、法人登記を行ってから5年未満であり、東京都と指定法人による創業支援事業を利用した会社です。

詳細を確認したい場合は、以下の記事を参考にしてください。

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、ものづくり補助事業による補助金です。働き方改革やインボイス導入などに対応するための設備投資に対して、最大3,000万円が支援されます。採択率は約59.7%であるだけでなく年に数回募集されるため、比較的支援を受けやすい補助金だといえるでしょう。

IT導入補助金

IT導入補助金は、サービス等生産性向上IT導入支援事業による補助金です。ITツールの導入に対する支援を目的としており、パッケージソフトの購入費・クラウドサービスの利用料金に対して30万円から40万円の支援がうけられます。補助を希望する場合は、IT導入支援事業者との相談や指定のセキュリティ対策に取り組む宣言が必要です。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、日本商工会議所による補助金です。従業員20名以下の商業・サービス業・宿泊業などの支援を目的として、販路開拓・生産性向上に対する50万円から200万円の支援が行われます。各地域の商工会からの定期的な指導とともに、幅広い支援が期待できるでしょう。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、厚生労働省が実施している支援です。非正規雇用労働者の正社員化・処遇改善のために、事業主に対して取り組みの内容に対する支援金が支給されます。たとえば賃金が3%増額となった場合、1人につき57万円が支給されるケースがありました。

近年話題のクラウドファウンディング

クラウドファウンディングは、インターネットの普及にともなって広まった資金調達方法です。「群衆(クラウド)」と「資金調達(支援者)」を組み合わせた造語であり、インターネット上で不特定多数から資金を調達することを指します。

クラウドファウンディングにもいくつか種類があるため、自身の合同会社に適した方法を採用するとよいでしょう。

クラウドファウンディングの種類サイクル
購入型クラウドファウンディング事業者は支援者からの寄付を受け、発起人へ資金を提供します。発起人はリターンとして、支援を募ったサービスやものをリターンとして提供する。
寄付型クラウドファウンディング事業者は支援者からの寄付を受け、発起人へ資金を提供します。ただし、発起人はリターンを提供する必要はありません。場合によっては手紙や写真などが提供される。
融資型1クラウドファウンディング事業者は投資家からの投資を受け、会社へ融資します。 2会社はクラウドファウンディング事業者からの融資に対して返済を行う。 3返済を受けたクラウドファウンディング事業者は、投資家に分配・特典を提供する。
ファウンド型1クラウドファウンディング事業者は投資家からの投資を受け、同じく会社へ投資します。 2会社はクラウドファウンディング事業者からの投資に対し、売上等に応じたリターンを行う。 3リターンを受けたクラウドファウンディング事業者は、それに応じたリターンを投資家に提供する。

会社運営開始後にかかる税金とは

会社を運営していくうえで、出費は多岐にわたります。設備投資や従業員の給与などもそのひとつです。なかでも、税金が大きな出費だと感じる方は少なくありません。合同会社を運営していくうえで必ず必要な出費となる、税金について解説します。

法人税

法人税は、国に支払う税金です。個人事業主でいうところの所得税であり、会社の所得に応じて一定の税率で納税します。合同会社の場合、社員総会で承認された決算書の容器利益をベースに1年に1度支払うのが一般的です。また、中小企業には軽減税率制度が適応されます。年800万円以下の所得金額について、19%が軽減される制度です。

赤字であった場合、納税の義務は生じません。

法人住民税

法人住民税は、地方自治体にむけて納税する地方税の一種です。公共サービスを受けるかわりに、会社が地方自治体に対して納税する目的があります。

また、法人住民税は法人税割と均等割の2つによって構成されています。法人税割は会社の所得に応じて算出される税率に基づいて納税する税金であり、資本金や従業員数に応じて納税額が定まっているのが均等割です。

赤字の場合であっても、負債分の支払いの義務は生じません。

赤字であった場合、均等割のみ支払義務が生じます。

法人事業税

法人事業税も、法人住民税と同じく地方自治体にむけて納税する地方税です。所得に対して一定の税率で納税します。また、赤字であった場合、納税の義務は生じません。

消費税等

消費税等は、国に対して納税する消費税と、地方自治体に納税する地方消費税の総称のことです。申告や納付は国が一括して管理しています。

まとめ

合同会社のメリットやデメリットだけでなく、合同会社の特徴・設立手順を解説しました。株式会社よりも会社設立のハードルが低いとはいえ、その手続きは複雑です。さらに、合同会社と株式会社はそれぞれメリットがあるため、どちらを選択するかを悩む方も少なくありませんので、よくわからない方は、経験者や専門家に相談することを考えても良いでしょう。

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