会社設立の要である定款とは?わかりやすく簡単に解説します
会社設立において、「定款(ていかん)」は必要不可欠な存在です。法律や会社設立手続きに大きな影響を与えるため、定款を作成する際は最低限の知識が求められます。そのため、専門家に作成を依頼する会社も少なくありません。とはいえ、定款で定める内容は、会社運営の根源であるともいえる需要な事項です。専門家に依頼した場合でも、自社の定款内容は理解しておくとよいでしょう。
今回は、定款についてわかりやすく解説します。定款の理解を深めるためにも、ぜひご一読ください。
会社設立において必要な「定款」とは
定款とは、会社の概要やルールを明記したものです。会社のあり方も記されているため、会社の憲法ともいえます。株式会社・合同会社などの会社形態を問わず、会社を設立するうえで必ず必要となるものです。書面・電子のどちらで作成しても問題ありません。
また、定款に記載する内容は会社法によって定められています。定款により会社の概要・ルールを定めることで、会社同士のトラブル・会社と雇用される従業員とのトラブル・会社が社会に影響を与えるトラブルなどを事前に防止するのです。従って、会社法を把握して定款を作成しなければならないといえるでしょう。
さらに、定款は株式会社の場合、公証役場で認証を行います。不備や記載漏れがないかを入念に確認される重要なものです。もし会社設立後に定款の内容を修正したい場合は、定款の訂正・変更などの手続きを行う必要があります。
定款に記載する内容とは
定款に記載すべき内容は、会社法によって定められているものです。また、定款は以下の3つの事項で構成されています。
- 絶対的記載事項
- 相対的記載事項
- 任意的記載事項
それぞれの事項を解説します。ただし、2022年7月時点の情報であるため、定款を作成する際は最新の情報(会社法)を確認したうえで作成してください。
絶対的記載事項
定款に必ず記載しなければならない事項を絶対的記載事項といいます。該当事項に不備があれば、定款の修正が求められる事項です。株式会社の場合、以下の事項が絶対的記載事項に該当します。
目的 | 会社の事業内容 |
商号 | 会社名 |
本店の所在地 | 本店もしくは事務所が所在する住所 |
設立に際して出資される財産の価額またはその最低額 | 資本金の金額 |
発起人の氏名または名称及び住所 | 会社設立時の責任者 |
相対的記載事項
相対的記載事項とは、必ず決める必要はないものの、決めた際は必ず定款に記載しなければならない事項です。会議などで決定されていた事項だとしても、定款に記載がなければ法律上無効になってしまう事項でもあります。金銭トラブルの防止に関係する事項が大半です。
現物出資 | 金銭以外の財産による出資(車、不動産など) |
財産引受 | 設立後に会社に譲渡する予定の財産 |
発起人の報酬・特別利益 | 設立時の発起人の報酬 |
設立費用 | 設立時に会社が負担する費用 |
ほかにも、株式会社の場合は株式総会の招集や、株式の譲渡制限・株券発行のルールなどがあげられます。出資した株主に対して、「出資した金額に応じた権利」を公平に与えることを明記した事項です。これらの株式に関する事項は、株式会社のみが関係する事項であり合同会社には不要な事項といえます。そのため、相対的記載事項になっているのです。
任意的記載事項
任意的記載事項とは、相対的記載事項と同じく必ず決める必要のない事項です。ただし、相対的記載事項と異なる点は、決めたとしても記載しなくてもよいという点にあります。
とはいえ、定款に定めておくことでトラブルを防止したり早期解決につながったりするため、決めた際は記載しておくとよいでしょう。
事業年度 | 会計期間を定めたもの |
取締役などの役員数 | 取締役(役員)の人数 |
株主総会の議長 | 株主総会を進める議長の氏名 |
定時株主総会の招集時期 | 事業年度修了の3か月前 |
基準日 | 株式の配当を確定させる日 |
各会社が、自由にルールを定められるように配慮した事項です。記載しなくても、決めなくても設立時において困ることはないでしょう。
会社設立の流れ「定款作成~会社設立後に必要な手続き」
会社設立までの流れを解説します。以下、「定款作成」「登記準備」「法人登記」「会社設立」の4つのステップを順にクリアしていくことで会社の設立が可能です。定款の作成は、会社を設立するうえでの第1ステップ。定款を曖昧に定めてしまうと、以降のステップに影響を与えるため注意が必要です。
会社設立の手続きに必要な書類や実印のなかには、すぐに用意できないものもあります。手続きの全体的な流れを把握して、余裕をもって行動できるようにしましょう。
会社の概要・ルールを記載した定款を作成します。定款は、会社を設立するうえで必ず作成しなければならないものです。定款に記載する内容は、「絶対的記載事項(会社法27条)」「相対的記載事項(会社法28条)」「任意的記載事項(会社法29条)」に該当する事項です。
なかでも「相対的記載事項」「任意的記載事項」に関しては、会社形態や組織構成によって記載が必要であるかを判断し、必要であれば記載します。
ただし、株式会社を設立する際に限り、定款を作成したあとに公証役場で認証手続きを受けなければなりません。認証を受けることで、法的な効力をもつ「正式な定款」になります。
定款の認証を受けたあと、登記手続きを行います。登記手続きには、以下のような複数の書類を揃える必要があるため、不備がないように注意しましょう。また、各書類はA4サイズで統一するのが一般的です。
・登記申請書
・登録免許税の収入印紙を貼付した台紙
・登記すべき事項
・定款(株式会社の場合は認証手続き済み)
・取締役の承認承諾書
・資本金の払込証明書
・法人印鑑証明書
場合によって、以下の書類をあわせて揃える必要があります。
・発起人の決定書
・代表取締役の就任承諾書
・監査役の就任承諾書
・取締役全員の印鑑証明書
登記申請手続きに必要な書類を揃えて資本金の払い込みを終えたあと、会社の本店所在地を管轄している法務局にて登記手続きを行います。原則、資本金全額の払い込みが完了してから2週間以内に行う手続きです。登記手続き日が会社の設立日になります。
また、登記完了までに必要な日数は、申請後1週間から2週間程度です。登記が完了した際は連絡があるため、申請後は連絡を待ちましょう。
ただし、申請内容に不備があった場合、「補正」「取り下げ」が求められます。速やかに指示に従い、申請内容を訂正してください。指示に従わなかった場合、書類一式が返却されないまま申請自体がなかったことになります。一度支払った手数料などを再度支払わなければならないため、十分に注意が必要です。
会社を設立するうえで、法人登記完了後の手続きも重要です。あくまで登記では会社設立が認められただけであり、実際に会社を運営するための手続きを行う必要があります。手続き内容によって、窓口や必要書類が異なるため余裕をもって行動するのがおすすめです。
定款は会社設立の要ともいえるほどの重要なもの
今回、会社設立の流れをふまえたうえで定款について解説しました。定款は会社の概要でありルールです。重要な契約を結ぶ際、定款の提出が必要となることも少なくありません。
さらには、会社を設立する際に行う手続きのすべての根源ともなる存在です。必要な書類や記載する事項は、定款の内容と共通ともいえます。定款を明確に定めなければ、会社設立の手続きをする場合や、運営後に重要な契約を結ぶ場合に支障をきたす恐れもあるでしょう。しっかりと検討したうえで、定款を定めることをおすすめします。